2017年08月23日

奈良県東吉野村で体験した古民家泊の魅力〜逢桜(ほうおう)〜

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 今、中国沿海部の長江デルタエリアでは「農家楽」がブームになっています。農家や使われなくなった古民家を再利用し、都会からきた人たちに泊まってもらう仕組みで、私も中国ではよく利用します。魅力はなんといっても地元の人々の日常に溶け込めることができるのと、ホンモノの地元の食。中国では地方政府も農家楽に対して財政面や法規制面で協力しています。で、私も日本国内を旅するときも、できるだけ旅館や民宿など個性が強い宿泊施設を利用するようにしています。もちろん、当たり外れもありますが・・・、結果的に、これが毎回旅に楽しさを添えてくれますし、旅することで過疎化の進む地元活性化に一役買えるのではないかと勝手に思っています。

 前置きはさておき、今回高見山登山の帰りに東吉野村で宿泊した「ゲストヴィラ逢桜」は、まさに日本のおもてなしを凝縮したような、肩肘の貼らない奈良の古民家泊の魅力が詰まっていました。
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 材木の街だった東吉野村にふさわしく、なんと3,000坪の広大な敷地に、明治初期に建てられた築145年の母屋を中心に、戦後の建築、先代の世界旅行からのヒントで生まれたスイス風の洋館、そして広大な日本庭園の絶景と茶室とまさにフルセット。ここ東吉野村にはとんでもない豪商がいたんだということを実感させられる邸宅に宿泊できるのです。しかも、1日2組限定という贅沢さ。

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 とても広いお部屋で、しかもお値段が比較的お手頃で、道理で中国など海外からもお客さんが来られるわけです。あとで聞いたら、なんと私の上海人の友人も、さりげなく宿泊していて驚きました。1日2組限定ですが、部屋は川側と庭園側と選べます。私たちは、日本庭園をじっくりと楽しみたかったので、母屋となる庭園側にしました。

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 また、さらにすごいのは温泉が出ているというところ。厳密には源泉の温度が低いので温泉の定義には当てはまりませんが、ご自身で高濃度の炭酸ガス彷彿間欠泉を掘り当てられたそうです。現在のご主人の代で作られたという木の香りがする浴室が魅力的で、眼下には川があり、川の音を楽しみながら貸しきりのお風呂を楽しめます。

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 夜は、奈良県人でもなかなか食べられない地元和牛のすき焼きをいただきました。
 脂っぽくなく、それでいて柔らかい、とても美味しい牛肉でした。

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 私個人的には、懐石料理や創作料理よりも、一般的なメニューのなかで、他との違いを出してくれる食材の食べ方が好きで、今回のすき焼きも美味しかったです。
 中国の地方の田舎料理なんかはとくにそうですが、調理方法はシンプルでも、素材の種類の豊かさで食を楽しませてくれる方が嬉しく感じます。

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 そして、夜は今時かなり珍しい蚊帳の中で寝ました。庭園の水も沢の水を引っ張ってきていますから、そもそも蚊がほとんどいません。網戸も窓も開けっぱなしで、開放感抜群で眠りに入りました。網戸の隙間を気にするよりも、人が蚊帳のなかに入ってしまったほうが楽ちんでいいですよね。

 奈良の茶がゆでの朝食のあとは、茶室で御抹茶をいただきました。

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 うちの娘は、抹茶が大好きで、実は密かにこれをかなり楽しみにしていました。立礼(りゅうれい)式でご主人が直々にお手前して下さいましたが、なんとテーブルが法隆寺の門のだったとか。本格的な茶室で、床柱には独特な形のナンテンの木が使われていました。

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 古民家からはじまり、温泉、郷土の味、そしてお茶席まで。一つ一つがご主人自らがおもてなししてくださり、楽しくかつアットホームな1晩を過ごすことができました。ご主人との会話がとても楽しかったです。

 この宿のご主人も仰っていましたが、今、中国を中心にアジアの富裕層はインターネットで観光地や宿の情報をみつけてやってきます。私もそうですが、CTRIPなど中国の大手旅行サイトは非常に充実していて、日本の旅館や民宿もそうしたサイトとの連係はとても大切だと思います。
 日本でも僻地に行けば行くほど、いま外国人の若者に人気の「秘境」の価値観が高まるわけです。さらに、そういうとことにわざわざ行くような中国の人たちですから、日本文化への理解も深く、マナーなどもしっかりとしていて、むしろ日本人よりもちゃんとしているかもしれないよ、とも言われました。今やそういう時代になってきているのです。

 この東吉野村ですが、大阪へ出るのにクルマでたった1時間ちょっとという距離なのに、かつて人口1万人近くいた村民は、いまやたった1600人。これでは流石に村内の経済を回していくのが大変でしょうし、日本の人口減少の現実を思い知らされました。

【データ】
HP:GUEST VILLA 逢桜
住所:奈良県吉野郡東吉野村小川876

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posted by 藤田 康介 at 00:00| Comment(0) | 日本の温泉

2017年08月22日

奈良東吉野村、夏の高見山(たかみさん)登山も悪くない

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  近畿のマッターホルンと呼ばれ、すらりとした形が印象的な東吉野村の山、高見山(標高1,249m)。
  我が家のある橿原今井町の近くに神武天皇陵がありますが、この高見山も神武天皇と関係があるようで、頂上に高角神社があることからも山岳信仰の山でもあります。その美しいシルエットは、榛原あたりからもしっかりと見えたりします。私の上海人の友人が、家から見える高見山に憧れて、古民家を買ってしまいました。

  この高見山ですが、樹氷や紅葉の時期に登山する人は多いですが、夏に登るという人はあまり耳にしません。これが今回行ってみて、意外と良かったので、記録しておきます。

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  今回は小学3年生の娘を連れて登ってきました。今回のルートは、高見山登山口バス停から旧伊勢南街道を経由して、小峠から頂上をめざすルート。駐車場がないので、他のクルマに邪魔ならないように駐車するようにという看板が出ていました。

 午前11時に出発して午後16時の下山だったので、約5時間の行程。もちろん、大人だけだったら、もう少し早くいけると思います。

 子どもにとっても高度をあげるにつれて樹木の表情が変わってくるので楽しく感じたようです。

 夏休みとはいえ、平日だったからか、この時期の高見山は誰一人すれ違うことのない貸しきり状態の山行でした。

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 登山を始めてからしばらくは、旧伊勢南街道の石畳の道を歩きます。江戸時代は紀州藩の参勤交代にも使われたそうですが、木陰になるのし、石のおかげで歩きやすかったです。当時は、塩や農作物、海産物交易の市が出たほどなので、賑わっていたことなのでしょう。ただ、当時からこの高見山付近は難所だったそうです。

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 天気もまずまずで、高見山の頂上からは奈良の山々が最高でした。
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 そして、稜線に出たときの涼しさ。
 標高2,000mもない山なのに、まさかここまで涼しくなるとはちょっとびっくりです。
 下界との温度差を非常に感じました。

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 しかも夜は東吉野村に宿泊しましたが、クーラーどころか、少し肌寒いぐらいの気温でした。近鉄大阪線の榛原駅からたった20分の距離なのに、この違いは大きかったです。

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 高見山の頂上では、様々な蝶が乱舞していて、これも美しかったです。

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 これほど街から近いところに大自然を楽しめる山があるのはとても魅力的です。クルマ移動の時間も少なく済みます。付近にも、東吉野村のたかすみ温泉、やはた温泉、少し足を伸ばすと宇陀市のあきのの湯までいけます。

 ただ、いくつか注意点も。
 この山は、登山口に蛇口から沢の水が出ていましたが、それ以外は途中に給水箇所が全くないので、水対策はきっちりとする必要があります。途中看板がありましたが、どうやら平成27年9月にクマが目撃されているとのこと。そして、入山時は、登山届を忘れずに。高見山登山口にあります。

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2017年08月07日

浙江省浦江県潘周家に伝わる伝統麺〜1本の麺、1つの鍋〜

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 中国各地を食べ歩くと、必ずその地方独自の食べ物が見つかり、いくら上海にいてもなかなか食べることが出来ない食材、それを発見するのが、中国の旅の楽しみです。創作料理でもなく、ただ伝統的な食を追い求めていくのです。

 そこで浙江省浦江鎮に再び行ってきました。上海からクルマで3時間程度の距離なので、大陸のちょっとしたドライブには良いです。実は、2016年にもこの辺りの村を訪れていて、詳しいことはこちらに紹介しています。

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 今回は、そこから更に桐廬方面へ北上し、潘周家という人口1,500人ほどの小さな村まで行きました。実は、CCTVでも紹介されていて、長い長い手延べ麺を伝統的に作っていることで有名です。

 この地域に様々な麺料理が伝わっているのも、そもそもこの辺りはかつて小麦の栽培をしていたからだそうです。

 村に入ると、通りには「一根麺」の看板が出ています。一本数メートルあるような麺を、現在では1メートルちょっとにまで切って、8の字に束ねて売っていますが、本来は長いままで一つの鍋で煮て食べるのだそうです。だからこそ「長寿麺」と言われるわけですね。めでたい麺なのです。

 麺といっても、年がら年中作られる訳ではありません。1年でも秋から冬にかけての5ヶ月が気候的に最も適していて、農民達が麺を干す様子が観察されます。現在では機械乾燥も可能になっているそうですが、それでも自然乾燥されるのが一番美味しいのだそうです。ちょうど、奈良の三輪素麺などで素麺が白い滝のようにぶら下げられますが、シーズンになるとそういう光景が広がります。私も、秋口にもう一度出掛けて見に行きたい物です。

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 せっかくここまでやってきたのだから、どこかのお宅にお邪魔して、麺をご馳走してもらうことにしました。ちょうど、農家楽(農家民宿)の前を通りかかったので、彼らが日常的に食べる麺を作ってもらいました。

 麺の生地はすでに冷蔵庫で熟成されていて、日本の手延べ素麺を作るのと同じように、索餅が保管されていました。それを引っ張り出してきて、伸ばして麺を作ります。この工程を「拉麺(ラーメン)」と中国語では呼びます。

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 出て来た麺は非常に具だくさん。野菜も鶏肉もいっぱいで、ご丁寧に卵も散らしてありました。まさに親子丼ならぬ、親子麺ですね。鳥の良いスープが出ていて、これが非常に美味しい。麺はうどん並の太麺です。歯ごたえもしっかりとあります。個人的には、豚骨スープよりも鳥スープのほうが味がまろやかで私は好きです。

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 数百年の歴史を誇る潘周家の麺は、乾燥させた麺も売られていて、こちらは家で湯がいていただきます。たっぷりのお湯を沸騰させ、麺をいれますが、このときに塩や水を加えたりしません。この麺の特徴は、しっかりとした歯ごたえですので、上海人の好きな柔らかな麺とは根本的に違います。もちろん、スープ麺としてでも良いですし、冷まして涼麺として食べても美味しいです。私は、日本のダシで食べましたが、素麺を食べるように頂けました。

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 さて、潘周家は、小さな村ですが、古い木造家屋も残されていて、ご先祖さんを祀っている祠堂が非常にたくさんあります。ざっと数えただけでも5〜6箇所はありました。一つの村にこれほど祠堂があるのは珍しい。そうした建物をブラブラ歩いてみるのもまた楽しいものです。

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 あ、野良犬が多いのでご注意くださいね。

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