
今、中国沿海部の長江デルタエリアでは「農家楽」がブームになっています。農家や使われなくなった古民家を再利用し、都会からきた人たちに泊まってもらう仕組みで、私も中国ではよく利用します。魅力はなんといっても地元の人々の日常に溶け込めることができるのと、ホンモノの地元の食。中国では地方政府も農家楽に対して財政面や法規制面で協力しています。で、私も日本国内を旅するときも、できるだけ旅館や民宿など個性が強い宿泊施設を利用するようにしています。もちろん、当たり外れもありますが・・・、結果的に、これが毎回旅に楽しさを添えてくれますし、旅することで過疎化の進む地元活性化に一役買えるのではないかと勝手に思っています。
前置きはさておき、今回高見山登山の帰りに東吉野村で宿泊した「ゲストヴィラ逢桜」は、まさに日本のおもてなしを凝縮したような、肩肘の貼らない奈良の古民家泊の魅力が詰まっていました。

材木の街だった東吉野村にふさわしく、なんと3,000坪の広大な敷地に、明治初期に建てられた築145年の母屋を中心に、戦後の建築、先代の世界旅行からのヒントで生まれたスイス風の洋館、そして広大な日本庭園の絶景と茶室とまさにフルセット。ここ東吉野村にはとんでもない豪商がいたんだということを実感させられる邸宅に宿泊できるのです。しかも、1日2組限定という贅沢さ。

とても広いお部屋で、しかもお値段が比較的お手頃で、道理で中国など海外からもお客さんが来られるわけです。あとで聞いたら、なんと私の上海人の友人も、さりげなく宿泊していて驚きました。1日2組限定ですが、部屋は川側と庭園側と選べます。私たちは、日本庭園をじっくりと楽しみたかったので、母屋となる庭園側にしました。


また、さらにすごいのは温泉が出ているというところ。厳密には源泉の温度が低いので温泉の定義には当てはまりませんが、ご自身で高濃度の炭酸ガス彷彿間欠泉を掘り当てられたそうです。現在のご主人の代で作られたという木の香りがする浴室が魅力的で、眼下には川があり、川の音を楽しみながら貸しきりのお風呂を楽しめます。

夜は、奈良県人でもなかなか食べられない地元和牛のすき焼きをいただきました。
脂っぽくなく、それでいて柔らかい、とても美味しい牛肉でした。

私個人的には、懐石料理や創作料理よりも、一般的なメニューのなかで、他との違いを出してくれる食材の食べ方が好きで、今回のすき焼きも美味しかったです。
中国の地方の田舎料理なんかはとくにそうですが、調理方法はシンプルでも、素材の種類の豊かさで食を楽しませてくれる方が嬉しく感じます。

そして、夜は今時かなり珍しい蚊帳の中で寝ました。庭園の水も沢の水を引っ張ってきていますから、そもそも蚊がほとんどいません。網戸も窓も開けっぱなしで、開放感抜群で眠りに入りました。網戸の隙間を気にするよりも、人が蚊帳のなかに入ってしまったほうが楽ちんでいいですよね。
奈良の茶がゆでの朝食のあとは、茶室で御抹茶をいただきました。

うちの娘は、抹茶が大好きで、実は密かにこれをかなり楽しみにしていました。立礼(りゅうれい)式でご主人が直々にお手前して下さいましたが、なんとテーブルが法隆寺の門のだったとか。本格的な茶室で、床柱には独特な形のナンテンの木が使われていました。

古民家からはじまり、温泉、郷土の味、そしてお茶席まで。一つ一つがご主人自らがおもてなししてくださり、楽しくかつアットホームな1晩を過ごすことができました。ご主人との会話がとても楽しかったです。
この宿のご主人も仰っていましたが、今、中国を中心にアジアの富裕層はインターネットで観光地や宿の情報をみつけてやってきます。私もそうですが、CTRIPなど中国の大手旅行サイトは非常に充実していて、日本の旅館や民宿もそうしたサイトとの連係はとても大切だと思います。
日本でも僻地に行けば行くほど、いま外国人の若者に人気の「秘境」の価値観が高まるわけです。さらに、そういうとことにわざわざ行くような中国の人たちですから、日本文化への理解も深く、マナーなどもしっかりとしていて、むしろ日本人よりもちゃんとしているかもしれないよ、とも言われました。今やそういう時代になってきているのです。
この東吉野村ですが、大阪へ出るのにクルマでたった1時間ちょっとという距離なのに、かつて人口1万人近くいた村民は、いまやたった1600人。これでは流石に村内の経済を回していくのが大変でしょうし、日本の人口減少の現実を思い知らされました。
【データ】
HP:GUEST VILLA 逢桜
住所:奈良県吉野郡東吉野村小川876
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