
中国各地を食べ歩くと、必ずその地方独自の食べ物が見つかり、いくら上海にいてもなかなか食べることが出来ない食材、それを発見するのが、中国の旅の楽しみです。創作料理でもなく、ただ伝統的な食を追い求めていくのです。
そこで浙江省浦江鎮に再び行ってきました。上海からクルマで3時間程度の距離なので、大陸のちょっとしたドライブには良いです。実は、2016年にもこの辺りの村を訪れていて、詳しいことはこちらに紹介しています。

今回は、そこから更に桐廬方面へ北上し、潘周家という人口1,500人ほどの小さな村まで行きました。実は、CCTVでも紹介されていて、長い長い手延べ麺を伝統的に作っていることで有名です。
この地域に様々な麺料理が伝わっているのも、そもそもこの辺りはかつて小麦の栽培をしていたからだそうです。
村に入ると、通りには「一根麺」の看板が出ています。一本数メートルあるような麺を、現在では1メートルちょっとにまで切って、8の字に束ねて売っていますが、本来は長いままで一つの鍋で煮て食べるのだそうです。だからこそ「長寿麺」と言われるわけですね。めでたい麺なのです。
麺といっても、年がら年中作られる訳ではありません。1年でも秋から冬にかけての5ヶ月が気候的に最も適していて、農民達が麺を干す様子が観察されます。現在では機械乾燥も可能になっているそうですが、それでも自然乾燥されるのが一番美味しいのだそうです。ちょうど、奈良の三輪素麺などで素麺が白い滝のようにぶら下げられますが、シーズンになるとそういう光景が広がります。私も、秋口にもう一度出掛けて見に行きたい物です。

せっかくここまでやってきたのだから、どこかのお宅にお邪魔して、麺をご馳走してもらうことにしました。ちょうど、農家楽(農家民宿)の前を通りかかったので、彼らが日常的に食べる麺を作ってもらいました。
麺の生地はすでに冷蔵庫で熟成されていて、日本の手延べ素麺を作るのと同じように、索餅が保管されていました。それを引っ張り出してきて、伸ばして麺を作ります。この工程を「拉麺(ラーメン)」と中国語では呼びます。

出て来た麺は非常に具だくさん。野菜も鶏肉もいっぱいで、ご丁寧に卵も散らしてありました。まさに親子丼ならぬ、親子麺ですね。鳥の良いスープが出ていて、これが非常に美味しい。麺はうどん並の太麺です。歯ごたえもしっかりとあります。個人的には、豚骨スープよりも鳥スープのほうが味がまろやかで私は好きです。

数百年の歴史を誇る潘周家の麺は、乾燥させた麺も売られていて、こちらは家で湯がいていただきます。たっぷりのお湯を沸騰させ、麺をいれますが、このときに塩や水を加えたりしません。この麺の特徴は、しっかりとした歯ごたえですので、上海人の好きな柔らかな麺とは根本的に違います。もちろん、スープ麺としてでも良いですし、冷まして涼麺として食べても美味しいです。私は、日本のダシで食べましたが、素麺を食べるように頂けました。

さて、潘周家は、小さな村ですが、古い木造家屋も残されていて、ご先祖さんを祀っている祠堂が非常にたくさんあります。ざっと数えただけでも5〜6箇所はありました。一つの村にこれほど祠堂があるのは珍しい。そうした建物をブラブラ歩いてみるのもまた楽しいものです。

あ、野良犬が多いのでご注意くださいね。
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