ある田舎の学校で、先生が生徒たちに、「君たちは、将来はこの村に残らず、都会にでて働きなさい、帰ってこなくてもいいのです・・・」といったことをホームルームで話していました。
過疎化で苦しむ日本の田舎の場合なら、なんとか若者が田舎へ戻ってくるように自治体が頭をひねるわけですが、この農村では逆に帰ってこなくてもいいと学校の先生が言っています。しかも、この番組が上海のテレビで放映されているから、特に政府の意図と反するわけでもないのでしょう。
後の話を聞くと、なるほどと理解できました。
すなわち、貧困農村にいて、効率の悪い農作業をするよりも、都市にいって技術を身につけて、収入のある仕事をしなさいということだったのです。中国の場合、近代化が遅れている農村が多いので、もっと近代化ができる農村で近代化をすれば、何億人もいる農村人口を大きく減らし、その人材が工業化の激しい都市のほかの分野で活躍できるという発想です。
じゃあ、故郷にのこされた彼らの親たち、すなわち高齢者はどうなるのか?彼らは若者のように技術もないし、識字率も低い。若者が出て行くと高齢化が進む一方…。
この先生の話では、「君たちが都会にいって稼げるようになったときに、両親を都会へ迎えに来てあげなさい・・・」と言っています。すわなち、改革開放以来行われてきた「富める者から富め」という発想の家庭版です。技術も知識も身につけた若者を先に「富ませる」とするわけです。
考えてみれば、それを実現している地方出身者のエリートは私の周りにも多い。上海にマンションを買って、自分の生活が安泰したら、次は親のマンション、といった感じです。
でも、お金があれば都会の生活に順応できるわけでもないし、そんなに都会の生活がすばらしいとも思えないし…。というのが、先進国にいるものの発想なのです。
中国の場合、都会には田舎にはない充実した社会福利厚生がある。戸籍の問題からも、やはり都会に親を住まわせたいと思うのは、「子供心」でしょう。
こういった背景からも「新・出稼ぎ族」が中国の都会部で増えてきているのです。
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