マーガレット・チャン事務局長とは、2002年に北京の学会で一度お会いしたことがあります。(といっても覚えていらっしゃらないと思いますが、名刺は交換しました。(笑))。
このとき、香港における中国伝統医学の発展と今後のあり方について熱く語られたことを覚えております。SARSが発生したとき、香港の衛生署長で、その対応についてはいろいろ非難もあるようですが、その後WHOの事務局長に就任されています。中国の支持があったとはいえ、まさかWHOに入られたとには非常に驚きました。
2003年に中国でSARSが流行したとき、私は上海中医薬大学付属竜華医院にいました。幸い、上海では大きな騒動にまでは発展しませんでしたが、臨床では分厚いマスクが配られ、宿舎は毎日消毒にきたし、私が日本語を教えに行っていた中学校の教室ではお酢がたかれていました。(かなり強烈なにおい)
そのほか、予防生薬も配られたりしました。タクシーの運転手もほぼ強制的にマスクをしていましたし、本当にピリピリとした状況だったことを記憶しています。
今回のメキシコ震源地として始まった新型インフルエンザでは、全世界がまさにあのSARSを彷彿させるような騒ぎになっています。中国ではとくに症例の報告はまだありませんが、ただ衛生部門の役人たちも中国に入り込む可能性も非常に高いとし、警戒を強めています。
陜西省西安市では4月10日〜16日にかけて学校の63人の生徒・先生が集団でインフルエンザに感染したそうですが、これに関しては特に新型インフルエンザではなかったたいう発表がありました。
中医学の歴史といえば、まさに伝染病と闘ってきた歴史でもあると思います。西洋医学がない時代、中医学で治療するしか方法がなかったのです。もちろん、治療としては完全とは言い難いかもしれませんが、そうした経験は、現代でも活かせます。
SARSが中国で流行したとき、上海市でもこの気候風土にあった予防用の生薬が衛生部門から発表されました。六味湯と呼ばれる黄耆・防風・白朮・防風・貫衆・陳皮・銀花で構成されたもので、予防として広く活用されました。今回の新型インフルエンザも、主に「湿熱」や「風熱」が原因であると考えられ、中医学の中でも温病学との関係が深くなるものと思います。今後、発病者の情報が入っていたら、中医学でもまた諸説が登場してくるでしょう。
中医学では、「正気」と呼ばれる抵抗力を重視します。この抵抗力がしっかりとしておれば、「邪気」と呼ばれるウイルスが体に寄りつきにくくなります。
「いまさら何?」と言われそうですが、でも体を元気にすることがまず大切です。それには、中医学も少なからず役立てます。私が以前研究したネフローゼ患者の子供たちの中医学治療でも、生薬を服用したグループは風邪の回数が減少しました。
上海市でのインフルエンザの予防摂取率は1パーセント未満。
費用は100元ほどでできるのですが、それでもまだまだ市民の関心が低いのも現実。今でも、多くの市民が予防接種は子供がするものという誤解を持っています。WHOも中国人のインフルエンザに対する認識が低いことを懸念しています。
そのため、万博を控えている上海では、小中学生や医療関係者、高齢者、万博会場で働く人たちを中心にインフルエンザの予防接種を普及させる計画を検討しています。
人口が多いだけに、伝染病には十分な対策をしなくてはいけません。そして、我々も予防できるように自ら努力する必要があると思います。無理せずに、今日は早めに家に戻って疲れをいやしましょう!
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