漢方の名前を冠につけて、それを服用した人が健康障害の被害です。どうして、こういとも簡単に信じてしまうのか、私からすると本当に悲しいです。
臨床に携わっていると、上海人は薬のブランドには非常にうるさい。つまり、すごく田舎で製造された薬や、変に効果をうたっている薬に関しては、まず手を出しません。インテリになればなるほどそうなのです。
生薬を服用する場合でも、薬の質がいい病院を探して受診するものです。それぐらい慎重でなければなりません。
私が10数年、中国の中医学の世界と関わってきて言えることは、中医学は確かに効果がありますが、それがめちゃくちゃ効果があるとは、私は口が裂けても言えません。
そんなにすごい物があるのなら、西洋医師がとっくに使っています。たくさんのノーベル医学賞をもらっている中医師も出ているはずです。でも、実際には科学者の栄誉でもある中国の「院士」の称号をもらっている中医師さえ、ほとんどいない。
それだけ、中医学のエビデンスを出すのに、研究者たちは日夜苦労しているわけです。
よく、中医学や漢方というと、すごく神秘的なものであるように日本人の間では思われがちですが、(たとえば気功を当てるとすぐに治ったとか)実際はそんな簡単なものではないのです。
生薬を使って、さらに患者の並々ならぬ努力の結果、病気は徐々にコントロールされていくのです。中医学はシャーマニズムでもなんでもなく、れっきとした医学であることを私は声を大にして言いたいと思います。
そしてそのことを、日本の皆様に伝えることが、私のライフワークでもあると思っています。
いま、ネフローゼの患者さんを小児科で観察しています。果たして、生薬を使ってどの程度効果をあげられるのか?私は科学的な手法を使って、一つの答えを出したいと思っています。
それと、中国のあやしい薬には手を出さないでください。もちろん、臨床で使われているまともな薬もあります。しかし、上海の病院でさえ使われていないのに、すごく効果があるはずがないのです。
中国の群衆の多くは一部の専門家をのぞいて、医学(西洋医学・中医学)に関して驚くほど無知です。その点は、情報があふれかえっている日本人の感覚とはかなりかけ離れていると思います。中国で生活をしていて、そういった群衆の言動に踊らされないことも非常に大切です。
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