2009年04月05日

「発」を考える

 今日も様々な皮膚疾患の患者さんに出会いました。上海市内の大病院をいろいろまわってうちにたどり着いた中国人の患者さんもおられ、とても一朝一夕ではいかないケースもありますが、でもやるだけのことはやらせていただきました。

 こう書いていくと、なにか私は皮膚科の医師のようですが、中医学ではこうした科による分け方はナンセンスで、あらゆるケースに対応しなくてはいけません。皮膚に疾患があっても、皮膚そのものに問題がある場合より、むしろ体の中に問題があって、そのシグナルが皮膚に表現されてるケースのほうが少なくありません。中医学ではこのことを、「表現於外、実発於内」といいます。

 例えば、慢性腎不全の患者さんが、末期になると皮膚のかゆみを訴えられることが多いのですが、これも体の中で発生した毒素に原因があるわけで、そのことには昔の中医師たちも当然気がついていました。

 となると、皮膚疾患の場合、体の中の環境変化を極力抑える必要があります。我々の生活と直接的に関係あるとすれば、やはり「食」となります。

 中国人はよく食べものの性質に関して、「発」という言葉を使います。日本語だと「あくが強い」的な意味合いもあると思いますが、要は皮膚にできものなどができやすい食べもののことを「発物」と言います。アトピー性皮膚炎などを抑えるためにも、この「発物」を理解しておくことは大切だと思います。

 一般的に、中医学的には辛温発散作用のある食物が「発物」に属すのですが、具体的には「発熱」・「発冷」・「発風」・「発湿」・「発血」・「滞気」などに分類されます。具体的には、「発熱」グループには羊肉やネギ、白酒、ニンニクなどが入ります。「発冷」の代表選手は柿でしょうか。エビや蟹類は「発風」グループで、かゆみなどを引き起こします。「発湿」には糯米や米酒などが入ります。蕎麦アレルギーなども言われますが、これらの食品は「滞気」グループです。大豆製品も「滞気」になります。豆類を食べ過ぎると、ガスが溜まりやすくなるのも、このあたりと関係があると思います。ヤマモモや胡椒などは、「発血」グループになります。

 そのほか、皮膚疾患に影響を与えそうなのがキノコ類で、食べ過ぎると体内に「風」を発生させ、頭痛などの原因になることもあります。野菜類だと、ほうれん草やタケノコ、ニラ、ネギなどが注意ということになるます。

 これから夏に向けて、皮膚病に対する生薬の使い方も変わってきます。ただ、夏場だからこそ、体に熱を注ぐような食品は少なめに摂取することも大切です。真夏の暑い時期に、羊肉を沢山食べたり、焼き肉などを食べ過ぎたりすることは、皮膚の保護のためにはナンセンスです。

 その代わり、緑豆など体の火照りを冷まし、体内の湿気を取り除いてくれるような食品を摂取することは良いと中医学ではいいます。

 昔の人の知恵が漢方・中医学には詰っています。私もさらに研究を進めてみたいと思います。

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posted by 藤田 康介 at 00:00| 未分類