2013年12月14日

上海でのPM2.5の主成分について

 今朝のPM2.5の値は良好です。上海では37〜34㎍/㎥なので、ぜひ窓を開けて運動したいところですね。このように日によって差がとっても大きいのが上海の大気汚染の現状なのです。

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 実は、私のまわりの一部の上海人も中国南方や国外に疎開しはじめているという話もまわりから聞くようになりました。日本の九州大学のデータからみると、次回の大きめの大気汚染は12月18〜19日頃の可能性が高そうです。

 上海のスモッグに関しては、実は20年前から観測されていたのだそうです。ところが、その当時の気象台の基準では、霧があってもスモッグはありませんでした。冬場とか黄浦江のフェリーなどが欠航したりすることが実際にあったりしましたが、実際にはスモッグが原因であったのですが、基準がなかったから発表されていなかったというわけなのです。

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(スモッグの酷かった12月6日)
 記憶に新しいのは、12月6日の強烈なスモッグは、航空機の運航にも影響を与えましたが、その時の成分は90%がPM2.5だったということです。(復旦大学環境科学工程系)また、12月9日のPM2.5の急上昇とスモッグの発生は、こちらの専門家によると高気圧の影響で空気が停滞しやすく、そこに弱い冷たい空気が南下することで、北方の汚染物質を移動させ、拡散するための条件が揃わなかったからだそうです。

 このように、上海の場合は特有の季節による影響も大きいことを加味する必要があります。たとえば、1月は西北の気流、3〜4月は黄砂、7〜9月は猛暑による光化学スモッグなどです。ただ、最近スモッグが頻発している決定的な理由として、すでに大気の汚染度が自然では大暑が難しい飽和状態になっているということがあげられます。



 かねてから色々問題となっているPM2.5の成分はなにか?について最近の報道をみているとぽろぽろと出始めています。私が集めた資料の中で分かっていることを整理してみたいと思います。

 まず、これは以前も報道されていましたが、上海市のPM2.5の発生源は、25.6%が工業関係、24.3%が自動車の排気ガス、10%が工事現場、7%が発電所、10%が焼き畑・レストラン・ドライクリーニング業などからとなっていて、実は20%が他のエリアからの流入だそうです。

 また、上海のPM10の中身は、有機化合物・硫酸塩・窒素酸化物・アンモニウム塩・炭素などが50%を占め、PM2.5の中身は、硫酸塩・有機化合物・アンモニウム塩・窒素酸化物と有機炭素が85%を占めているのだそうです。このうち、有機化合物はPM2.5全体の20〜30%を占め、その成分の中には発がん性物質でもあるポリ塩化ビフェニル、多環芳香族炭化水素,ポリ臭化ジフェニルエーテルや水銀なども含まれていることがあるということです。重金属の水銀に関してはウワサは聞いていましたが、マスコミ(『新民晩報』)が書いたのを見たのは初めて見ました。


 ここで問題となるのは空気清浄機の性能の問題です。技術的に、PM2.5の除去はできても、こうした有機化合物の除去が完全にできるわけではなく、窓を開けない限り部屋に残るわけなので空気浄化を進めると逆に嚢縮されます。この処理をどうするかということになります。
 また、学校の教室などに空気清浄機を置くこともありますが、面積的にも大きく、人の出入りも激しいので期待した効果が得られるかどうかは疑問です。このように空気清浄機の欠点として、密閉した環境で使うので、新鮮な空気を取り入れることができないというところにあります。やはり、本格的な空気循環システムが必要と言うことになります。中国でも新しい建物ではそうした設備を備えているところがあります。

 交通機関内でのPM2.5濃度について、『新聞晨報』の報道では、一番数字がよかったのは地下鉄の車内で、路線バスの半分ぐらいになっていました。道路はもともとクルマが多いわけですし、PM2.5は必然的に高くなります。また、地下鉄の気密性が高いのと空調システムによる影響もありそうです。マスクをすることも大切ですが、クルマが多い朝夕のラッシュ時にはなるべく出歩いたりしないことも大切です。

 ちなみに、上海万博前ごろのデータで、上海交通大学の研究によると、2009年当時では、PM10の1日平均濃度が50㎍/㎥増加すると、呼吸器科の患者数が3%、小児呼吸器科の患者数が0.5%増加し、これがPM2.5だと、濃度が34㎍/㎥上昇すると呼吸器科の患者数が3.2%、小児呼吸器科の患者数が1.9%増加したのだそうです。PM2.5が呼吸器に与える影響は間違いなくあることが分かります。国内外の研究でも、スモッグと肺がんとの関係は指摘されていて、スモッグが高濃度だった時期の7年後に肺がんが急増する関係がいわれています。今回の中国のスモッグもどのような研究結果がだされるか注目です。

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(空気が良いときはこんな感じです)

 このように、空気中のPM2.5が肺から体内にはってくると、肺胞でのガス交換の後、血液中に入ります。肺胞に蓄積されたPM2.5は、除去されるスピードが非常に遅いため、肺の炎症反応や全身の炎症反応を起こし、咳や喘息などの症状を引き起こすことになります。そのためには、まずタバコをやめ、酒を控え、免疫力を高めるように体調を整え、40歳以上の人は年に1度はCTを受けて肺のチェックをしてほしいと上海の専門家は呼びかけています。免疫力の観点から考えると、食生活のバランスや中医薬(漢方薬)もある程度有効ではないかとも考えられます。


posted by 藤田 康介 at 07:56| Comment(1) | 上海の大気汚染状況
この記事へのコメント
先生のブログ、大変興味深く拝見いたしました。結局、今回のPM2.5について空気清浄機は一定の意味があるが、フィルターの掃除などの折に濃縮されたPM2.5の塵をどうするのか、ということを考えない限り、根本的な解決は見られないということですね。あとは身体を鍛えて、免疫をあげ、避難できるときは避難するという感じでしょうか。なんだか放射能の時と似てる気がします。
Posted by 上海にすぐ行く人 at 2013年12月17日 22:29
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