2014年02月18日

中国の赤ちゃんポストの悲哀

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(こういう子供を増やさないためにも大人の責任は大きい)

 日本でも少し前に話題になっていた赤ちゃんポスト。中国語では『嬰児安全島』と表現されています。中国民政部では2013年7月より中国全国で赤ちゃんポストを設置しはじめていて、2014年現在では河北省、陜西省、貴州省、福建省など各地で試験運用されています。

 遺棄された子供については保護された後、上海でも新聞などに顔写真入りで公告されています。この写真を見る度に心が痛むのですが、よく読むと先天的な疾患をもって生まれてきた子供たちが多いことに気づきます。一人っ子政策の関係もあり、中国では人工中絶に対する抵抗が少ないのか、意外と中絶経験者が多いのには大変驚きます。

 私も中国人の若い女性を診察するとき、人工中絶後のケアに中医学のケアに来られることも多いです。このあたりの倫理観は、日本人とはちょっと違うと私は考えています。少なくとも生命に対する考え方の「重み」が全然違います。


 さて、この嬰児安全島ですが、大都市では、天津市でも設置されていますし、最近では2014年1月28日から広東省広州市社会福利院にも設置されました。ここでは、設置後10日以内に33人の乳幼児を保護したとのこと。この数の多さに、関係者は驚いたと『羊城晩報』では報道しています。

 この保護された33人のうち、最高齢は5歳。この5歳の子供も脳性麻痺の診断が出ていたのですが、もちろん自我も出て来ているわけで、当然父母の記憶もあります。こうやって父母に置いておかれた記憶は、きっと一生心の中に傷として残り続けることでしょう。

 この中国の嬰児安全島には監視カメラが設置されていません。誰が子供を置いていったのかは分からないようになっています。ただ、そこにはノートがあって、一言メモを残すことが出来るようになっていますが、あまりにもあっさりとした記述で、身元を調べることしら出来ず、関係者も驚いたとのこと。

 中国では病院の入り口に置いておかれる乳幼児のことはニュースにもなっており、発見後に警察が福利院に連れて行くというケースでした。広州では、33人全員が先天性の疾患を持っていて、親たちがなんとか病院にまで連れてきて治療を試みたものの、金銭的な負担ができず、こういう選択に至ったということが容易に想像できます。

 さらに広州のような巨大都市では、田舎の地方から少しでもいい医療を受けさせようと子供を連れてきた、親たちの最後の望みがあったのかもしれません。難病や先天的な疾患への対応が十分に出来ていない中国の医療制度の弱点をうかがい知ることができます。

posted by 藤田 康介 at 07:33| Comment(0) | ここは上海なり
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