
近年、中国でも法律が整備され、市民意識の変化もあり、裁判所が大忙しの状態であることは想像に難くないですが、肝腎の裁判官が不足していて、さらに人材の流出が続いていることが大きな問題になっています。この上海でも例外ではありません。『青年報』が報道していました。
「両会」で、上海市高級人民法院の院長が自身経験を踏まえ、かつて貴州省の法院(裁判所)や検察院では、人材流失で開廷できないこともあったようです。上海だけでも、年平均67人の裁判官が辞職し、2013年に至っては74人が去って行ったそうです。年齢層は40〜50歳が中心で、一番油がのっている世代。辞めてからも政府機関に残って仕事をする場合もあれば、民間企業に就職してしまうことも多いのだそうです。
そうすると、大変なのが人材育成で、後に続く人たちが育たず、よりより裁判を行うのに決していい環境ではないことが分かります。
その原因の一つに、20年間ほとんど変わっていない待遇にもあるとか。上海で家を買うのも難しい程度の待遇では、さすがに問題ありというわけです。
ただ、こうした矛盾は医療の世界でも同じです。最近、病院で働く医師が患者から暴力をうけて死亡する事件が多発、私のまわりでも医師を職業として続けていく自信をなくして、製薬会社や中にはまったく違う分野で転職してしまう仲間も出ています。
そもそも薄給で過酷な仕事の上に、生命のリスクや職業に対する尊重がなければ、とてもやっていける状態ではないからです。また、医療として毎日仕事をしていても、社会や病院、さらに制度の仕組みのなかで、理不尽なものを見せつけられているのもまた事実で、社会の矛盾に日々直面する裁判官にしてもそういう背景があるのではないかと思いますし、そうした無力感を現場から感じることがあります。
私も妻も中医学の医師として働いていますが、こうして仲間が去って行くことは寂しい限りです。我が家の場合は、夫婦で職種が同じなので、日々何かと討論できるのがやはり恵まれていると思っています。

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