
先日、私の上海人の親友も興味深いことをしていました。まず、立ち退きになりそうなエリアを上海市内で探してくるらしい。そして、立ち退きが決まる前にそのあたりの小さな物件を買う。彼の場合、たった6平米の物件を1平米10万元というとんでもない値段で買ったらしい。総額は60万元。もちろん、立ち退きが決まってしまったら売買も名義変更もできないので、裏情報を仕入れなければなりませんが、彼はそういうのが得意。
買ってしまうと、あとは親せきなどの戸籍をそこに入れてしまう。なんと、6平米に5人も戸籍を入れてしまったそうです。しばらくすると、万良く立ち退きが決定。その結果、上海郊外に5部屋のマンションが割り当てられ、さらに不足分は現金でも補償されるのだとか。どんなに安く見積もっても総額600万元ほどの価値になってしまいましたから、10倍に増加したわけです。
ただし、こうした立ち退きの恩恵を被ることができるのは1度だけです。2回目は禁止されています。いずれにしろこんな話は時々私のまわりでも耳にします。
さらに立ち退き交渉は、立ち退きを担当する役人との交渉力がポイントです。話を聞いてると、「規定」はあくまでも表向きで、それぞれの村の「実情」にあった交渉術が展開されていて、智恵やコネのある人が多くのマンションを手に入れている、そんな実態が見え隠れしています。大都市上海でもそんな状態ですから、地方にいくともっとドロドロしていることでしょう。基本的にもらえるモノはなんでももらってしまえという発想ですね。
結果、農民達は現金や物件を手に入れ、人によっては働かずに麻雀三昧の生活をおくっているひとたちもいました。そうなると安すぎる賃金で汗水出して働くことに意義を見いだせなくなってしまいます。これもある意味、社会の歪みを作り出す原因になりかねませんね。
このほか、この立ち退きに伴う経済の循環はいろいろあります。私が先日見に行った立ち退き案件では、立ち退きの空き地を、立ち退きが完全に終わるまでゴミため場にしていました。これも後ろにお金が動いているらしい。さらにそのゴミためを回収したり整理したりする人たちが、残されたバラックのなかで暮らしていました。
立ち退きマンションの建設では、お役所がウラで資金を集めているというのもありました。銀行よりもずっと良い利子がつき、しかも政府の公務員など特定の人だけが出資できるという条件のものもあります。こういうのはまず表にでてきません。
街の再開発で、どれだけのお金がドロドロと動いているのか。中国の社会の不透明さと複雑さを実感することができます。不透明だからこそ、表が潰れてもどうにかなるかもしれないし、場合によっては致命傷になってしまうことも考えられます。

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