2014年04月21日

深刻な中国の土壌汚染

  中国の土壌汚染が酷くなっていることは中国で生活しているとなんとなく実感していましたし、このブログでも過去に沢山の記事を紹介してきました。

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 荒れ地に無造作に捨てられた廃棄物、さらに回収業者がいるものの、必要な部位はカネにかえられ、不必要なものは野ざらしといったケースも多い。田舎へいくと、農薬などの空き瓶が農地にもころがっています。

 今回発表された、中国環境保全部と国土資源部が2005年4月〜2013年12月まで全国規模で行った中国大陸の土壌汚染調査は、総面積630万平方キロにも及びます。その結果、全体の16.1%で土壌が汚染されていることが分かり、地域によっては汚染率が19.4%にも達しており、健康被害が心配される状況になっていました。

 中国全土でみると、カドニウム汚染が突出していて、多い順にはニッケル、ヒ素、水銀、銅と有害な重金属が続きます。有機化合物では、クルマの排気ガスと関係が深い結合交代多環芳香族炭化水素(alternant PAHs)による汚染、農薬であるDDD(DDTに似ている)、BHCによる汚染が進んでいることも分かりました。


 汚染分布では、北方よりも南方が、長江デルタエリア・珠江デルタエリア・東北地区などの重工業エリアの汚染が突出しており、その範囲は内陸にも広がってきています。大気汚染や水質汚濁と比較して、土壌汚染は気づかれるのが遅れるだけでなく、一旦汚染がはじまると回復させるのには多大な時間とお金が必要で、問題が深刻であることが分かります。


 土地用途別にみる土壌汚染率は、耕地が19.4%、森林が10.0%、草原が10.4%となっています。農地の汚染が多いのは、工業による大気汚染、鉱物採掘による重金属汚染、クルマの排気ガスの問題以外にも、汚水による灌漑、化学肥料・農薬の不正使用、家畜養殖業の影響などが考えられます。さらに、近年中国で深刻化している酸性雨も、土地が酸化されてカドニウムなどの金属活性が高まり、稲などに吸収されやすくなるほか、稲の生物学的特性からカドニウムを容易に吸収しやすいという背景もあります。


 明らかなのは、やはり汚染地域に近い場所では土壌汚染が極めて高いということです。この調査では690箇所の重度汚染企業周辺の土地も調査していますが、汚染率は36.3%に、また工業園区(工業団地)での汚染率も29.4%に達しています。そうしたエリアの住宅では、まず土壌汚染対策をしているようには思えませんし、住むのには向きません。さらに、交通量が多い道路周辺での汚染です。そうした土壌では鉛・亜鉛・PAHsなどによる汚染が深刻化します。中国ではクルマが爆発的に増えていて大変なことになっていますから、その影響の大きさは容易に想像できます。


 また、中国では上海も含めて、ゴミ処理の多くは埋め立てに頼っていて、エリア周辺での汚染率は全体で21.3%になっていました。また、ゴミ焼却施設周辺でも有機物汚染が深刻であることが分かりました。

 これらの数字をみると、決して楽観できない状況であることは確かですし、中国政府も政府も認めています。中国は国土も広く、しかも人口が多い。経済的活動も非常に活発で、隅々まで監督するのが難しいなかで、こうした問題を解決するのは一筋縄ではいかない。


 地方出身者が大都市に移住するのも、こうした環境面での矛盾が出て来ているからです。地方では政府の力がなかなか環境保全にまで及ばず、対策がますます後手後手にまわり、健康への影響が懸念されるからです。さらに上海人が海外移民に必死で、海外に出て行くと帰ってこなくなるのも容易に想像がつきます。

posted by 藤田 康介 at 07:24| Comment(0) | 中国の食の安全について

2014年03月13日

中国の重金属問題とバッテリー

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 大気汚染の問題を解決するために、一気に中国で普及した電動自転車や電動自動車。ところが、今度はこのバッテリーの処理の問題がなかなか進んでいないとのこと。水と土壌の汚染となるだけに、こちらも厄介な問題で、「両会」でこの対策を提案した代表もいたそうです。

 中国のデータでは、2013年に中国で走っている電動自転車の台数はなんと3505万台。さらに、4輪の低速電動自動車も15万台あるそうですが、電池の容量からすると、電動自転車150万台に相当するとか。最近では、その利便性から電動自転車の代わりに4輪の低速電動自転車が使われることも増えており、新たなマーケットになっています。ただ、問題はそのバッテリーの処理で、価格的にもリチウム電池の普及はまだまだで、その大部分は鉛蓄電池が使われているのが現状のようです。

 ところが、問題となっているのはバッテリーの回収状況。広州の『羊城晩報』の報道では、中国でも一応97%の鉛蓄電池は回収されているものの、鉛の回収率は30%に留まっているらしい。先進国では95%以上が回収されているそうで、中国での回収率の悪さが問題だと言われています。その結果、年間260万トンものの鉛が処理されることなく垂れ流されているというわけです。この垂れ流されている鉛の行方が気になります。

 確かに、政府の発表では、中国の農耕地で少なくとも10%が重金属によって汚染されていてその面積は1.5億畝にも及び、そのなかでも5000万畝は中程度以上の重金属汚染で耕作に適さない状態とのことです。(1畝は0.992アール)
 さらに、収穫された農作物の1300万トンは重金属に汚染されているだろうという報告もあります。

 大気汚染が収まっても、土壌や水が汚染されたらこれまた厄介な話。早急な対策が必要です。中国でも対策は後手後手になっている現状ですから。

 いずれにしろ、環境問題に力を入れるには、今の社会の発展状況からみると、間違いなく便利さを犠牲にしないといけませんし、それ相応のコストも払わないとダメなわけです。それを犠牲にした上での経済発展では人間の生存すら危ぶまれます。

 中国で生活すると、日本で当たり前の空気や水が如何に貴重なものか身を以て感じることができます。

posted by 藤田 康介 at 07:29| Comment(0) | 中国の食の安全について

2013年05月09日

山東省の生姜の農薬騒動

 中華料理では、調味料として欠かせないのが生姜。特に、上海など南方エリアでは必ず生姜は使われます。日本でも報道されていますが、このうち、中国山東省で生産された生姜で、農薬の基準値を大幅に超えていた問題が、こちらのマスコミを賑わせています。山東省の生姜は、見栄えもよく人気がありました。

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 5月8日は、毒生姜が広東省広州市でも見つかり、すでに4000トンの生姜が処分されました。広東料理も生姜をよく使うのでショックな話です。

 今回生姜で問題となった農薬は中国語では「神农丹(涕灭威)」です。日本語ではアルジカルブといいます。アルジカルブに関しての詳しい情報は、日本の厚生労働省食品安全委員会が農薬評価書を出しています。( http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001yuem-att/2r9852000001yukw.pdf


 中国の基準では、アルジカルブの最大残留量は0.03mg/kgですが、広州での検査で見つかったサンプルでは、0.097mg/kgと0.034mg/kgでした。ちなみに、深センでも一部で毒生姜が見つかっていて、山東省産の生姜への検査が強化されたということです。

 そもそも、中国では国土が広いので、各地から農作物が上海へ輸送されています。例えば、上海崇明島のカリフラワーも北方へ出荷されているのですが、やはり輸送距離や時間がかかると、当然鮮度が落ちるわけで、そのために小細工も必要となります。あたりまえですが、できるだけ地元産で、旬の野菜を食べるようにするのが、食の安全に欠かせない対策だと思います。毒生姜事件以降、広州でも地元の生姜が売れるようになったとか。

 安全な野菜を食べるためには、やはり五感を働かせるしかないのが現状。よく、虫食いの野菜が安全だとかいいますが、これも決してそうだと断言できません。農薬を散布する時期がずれたりすると、虫が成長してしまい農薬の効果が低下してしまいます。逆に、虫に食べられた野菜をみて、さらに農薬を散布してしまう可能性もあります。
 また、農薬は我々人間や昆虫に害を与えるだけで無く、野菜そのものにも影響がでるものです。これは、有機栽培をしているか、いい水をつかって栽培しているかで違いが出てくるのと同様、野菜そのものの味・食感にも十分注意して識別する必要があります。

 しかし、十何億人もの人民達を中国は養っていかなくてはいけません。すべて無農薬・有機栽培で供給するなんて到底無理な話です。そのバランスをどこにもってくるかが、今後ますます必要とされるでしょう。

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 気にしてもキリが無いので、我が家では家庭菜園をしていますが、青梗菜なんかは意外とはやく大きくなりますよ。




posted by 藤田 康介 at 10:54| Comment(0) | 中国の食の安全について