
荒れ地に無造作に捨てられた廃棄物、さらに回収業者がいるものの、必要な部位はカネにかえられ、不必要なものは野ざらしといったケースも多い。田舎へいくと、農薬などの空き瓶が農地にもころがっています。
今回発表された、中国環境保全部と国土資源部が2005年4月〜2013年12月まで全国規模で行った中国大陸の土壌汚染調査は、総面積630万平方キロにも及びます。その結果、全体の16.1%で土壌が汚染されていることが分かり、地域によっては汚染率が19.4%にも達しており、健康被害が心配される状況になっていました。
中国全土でみると、カドニウム汚染が突出していて、多い順にはニッケル、ヒ素、水銀、銅と有害な重金属が続きます。有機化合物では、クルマの排気ガスと関係が深い結合交代多環芳香族炭化水素(alternant PAHs)による汚染、農薬であるDDD(DDTに似ている)、BHCによる汚染が進んでいることも分かりました。
汚染分布では、北方よりも南方が、長江デルタエリア・珠江デルタエリア・東北地区などの重工業エリアの汚染が突出しており、その範囲は内陸にも広がってきています。大気汚染や水質汚濁と比較して、土壌汚染は気づかれるのが遅れるだけでなく、一旦汚染がはじまると回復させるのには多大な時間とお金が必要で、問題が深刻であることが分かります。
土地用途別にみる土壌汚染率は、耕地が19.4%、森林が10.0%、草原が10.4%となっています。農地の汚染が多いのは、工業による大気汚染、鉱物採掘による重金属汚染、クルマの排気ガスの問題以外にも、汚水による灌漑、化学肥料・農薬の不正使用、家畜養殖業の影響などが考えられます。さらに、近年中国で深刻化している酸性雨も、土地が酸化されてカドニウムなどの金属活性が高まり、稲などに吸収されやすくなるほか、稲の生物学的特性からカドニウムを容易に吸収しやすいという背景もあります。
明らかなのは、やはり汚染地域に近い場所では土壌汚染が極めて高いということです。この調査では690箇所の重度汚染企業周辺の土地も調査していますが、汚染率は36.3%に、また工業園区(工業団地)での汚染率も29.4%に達しています。そうしたエリアの住宅では、まず土壌汚染対策をしているようには思えませんし、住むのには向きません。さらに、交通量が多い道路周辺での汚染です。そうした土壌では鉛・亜鉛・PAHsなどによる汚染が深刻化します。中国ではクルマが爆発的に増えていて大変なことになっていますから、その影響の大きさは容易に想像できます。
また、中国では上海も含めて、ゴミ処理の多くは埋め立てに頼っていて、エリア周辺での汚染率は全体で21.3%になっていました。また、ゴミ焼却施設周辺でも有機物汚染が深刻であることが分かりました。
これらの数字をみると、決して楽観できない状況であることは確かですし、中国政府も政府も認めています。中国は国土も広く、しかも人口が多い。経済的活動も非常に活発で、隅々まで監督するのが難しいなかで、こうした問題を解決するのは一筋縄ではいかない。
地方出身者が大都市に移住するのも、こうした環境面での矛盾が出て来ているからです。地方では政府の力がなかなか環境保全にまで及ばず、対策がますます後手後手にまわり、健康への影響が懸念されるからです。さらに上海人が海外移民に必死で、海外に出て行くと帰ってこなくなるのも容易に想像がつきます。
