2018年04月02日

上海奉賢名物の伝統小吃「海棠糕(ハイタンガオ)」〜まるでダブル今川焼き

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 日本では江戸時代に考案されたという今川焼きに対して、上海にもよく似た点心が伝わっています。それが、上海奉賢区の伝統小吃「海棠糕(ハイタンガオ)」です。海棠とは海棠花(日本名:ホンカイドウ)からきていて、なんとも風情ある名前。ちなみに、蘇州には同様の小吃として梅花糕もあります。

 清代に上海エリアで有名になり、江蘇省無錫あたりにも伝わったとも言われています。今川焼きとは、きっと同じぐらいの時代に誕生した小吃なのかもしれません。

 奉賢区の南側、海に近いエリアに奉城鎮という街があります。

 ここで昔ながらの海棠糕の作り方を守っている屋台が残っていて、思わず十何年作り続けている範さんに会いに行ってきました。

 もうすぐ70歳になる範さんは、今でも街の中心部にある市場(菜場路)の入り口に三輪自転車で乗り付けています。早朝と午後3時頃、つまり市場が賑やかになるころに店が登場するわけですが、朝4時には起きて小麦粉を発酵させ、小豆を煮てあんの準備をされるそうです。焼くための特性の鉄板も特徴があり、今となってはなかなか手に入らなくなっているそうです。鉄板に塗る油は「猪板油(豚の腹部分のラード)」を使います。

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 作り方で今川焼きとの大きな違いは、一方に餡をいれて、もう片一方をフタする方法ではなく、円柱形の型に小麦のネタを入れ、なかに餡を沈ませて一つ目作ると、その上に砂糖を焦がしたカラメルをかけ、同じものをもう一つ作って、食べる時に2つくっつけてサンドイッチにします。

 つまり、今川焼きがカラメルを真ん中に、ダブルでくっつている感じです。

 ところでお値段ですが、今時の上海では考えられない値段で、一個2.5元!

 なんと50円もしません。

 こうした上海地元のソウルフードが廃れてしなわないうちに、職人達の味を楽しみに出掛けてみたいと思います。

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posted by 藤田 康介 at 21:41| Comment(0) | 中国で食べる

2017年11月14日

完全手作りの手延べ麺の村、浙江省浦江潘周家村

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 中国では本当に色々な麺類が楽しめます。
 何と言っても村々の伝統としてその技術が伝わっていて、今でも麺を作って生計を立てている農民達がいる地域が沢山残っています。麺好きの私にとっては、もういてもたってもいられません。

 今回訪れたのは、上海から300キロぐらいの道のりで、高速道路と山道を走ること4時間弱、浙江省の山間部に位置する潘周家村です。実は、夏にも訪れているのですが、その時は麺を干す時期に達しておらず、11月が麺作りの最盛期と聞き、再訪しました。

この日は天気が崩れるということだったので、なるべく早く現地に着かないと、雨では麺は干せません。朝まだ暗い6時頃に上海を出発し、外環状からG60高速道路を乗り継ぎ、杭州を経由して潘周家村に到着したのは10時過ぎ。

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 村近くに到着すると、早速農家の庭先で麺を干す風景が見られました。

 潘周家村は、実は潘家村と周家村の2つの村があり、それぞれ周と潘の名字の人たちが住んでいたのですが、今では一緒になってしまいました。人口1,600人、約500世帯程度ですので、中国では規模の小さな村に属するでしょう。

 この村の麺は非常に長いのが特徴で、そのままでは湯がくのも大変なので、私はまずは剪刀で切ってから湯がくようにしています。ただ、中国人にとっては、長い麺は縁起物なので、主に春節の頃に長寿を願って食べることが多いです。その頃になると、この村の麺も飛ぶように売れるのだそうです。

 発酵させた小麦を伸ばして麺にするのにはなかなかの技術がいるようで、あまり上手ではない人では、干す段階で途中で切れてしまうそうです。まだ暗い、夜明け前から生地を仕込み、明け方から麺を干し、お昼前ぐらいまでに取り込むという作業を繰り返します。山間部の農民達にとっては貴重な現金収入なので、皆さん積極的に麺作りをしていました。

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 もちろん、発酵させた生地は、蜷局状に保存され(索餅)、食べる前に伸ばすこともあります。私が宿泊した農家楽(農家民宿)では、豚骨スープと卵に青梗菜を組み合わせて、見事な湯麺を食べさせてくれました。骨付き豚肉が旨みを出して非常に美味しい。また、こうやって作られた麺はうどんのような歯ごたえがあり、スープに入れても伸びにくいのが特徴です。麺自体に若干塩気がありますが、日本のうどんほど塩辛くはありません。

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 一方で、麺を干すときに、竹の棒にくっついた尖端部分は、「麺頭」といって、あまり商品価値のないものとして扱われています。地元では、圧力鍋で湯がき、青梗菜とあわせて朝食の材料として使っていましたが、私は真っ先にマカロニを連想してしまいました。案の定、チーズとミートソースをかけてオーブンにいれると、マカロニより歯ごたえの良いグラタンができました。地元の農民達はまず思いつかないと思います。

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 秋真っ盛りのこの季節、村の畑では紅大根や青梗菜、白菜が青々と育っています。こうした野菜も麺と組み合わせると非常に美味しく頂けます。

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 このあたりでは、今では稲作が行われていますが、かつては麦が植えられていて、その影響で麺食が今に伝わっているのだそうです。中国各地に様々な手延べ麺がありますが、浙江省潘周家村の麺は、気候風土にあった特徴ある麺だと思います。

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2017年08月07日

浙江省浦江県潘周家に伝わる伝統麺〜1本の麺、1つの鍋〜

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 中国各地を食べ歩くと、必ずその地方独自の食べ物が見つかり、いくら上海にいてもなかなか食べることが出来ない食材、それを発見するのが、中国の旅の楽しみです。創作料理でもなく、ただ伝統的な食を追い求めていくのです。

 そこで浙江省浦江鎮に再び行ってきました。上海からクルマで3時間程度の距離なので、大陸のちょっとしたドライブには良いです。実は、2016年にもこの辺りの村を訪れていて、詳しいことはこちらに紹介しています。

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 今回は、そこから更に桐廬方面へ北上し、潘周家という人口1,500人ほどの小さな村まで行きました。実は、CCTVでも紹介されていて、長い長い手延べ麺を伝統的に作っていることで有名です。

 この地域に様々な麺料理が伝わっているのも、そもそもこの辺りはかつて小麦の栽培をしていたからだそうです。

 村に入ると、通りには「一根麺」の看板が出ています。一本数メートルあるような麺を、現在では1メートルちょっとにまで切って、8の字に束ねて売っていますが、本来は長いままで一つの鍋で煮て食べるのだそうです。だからこそ「長寿麺」と言われるわけですね。めでたい麺なのです。

 麺といっても、年がら年中作られる訳ではありません。1年でも秋から冬にかけての5ヶ月が気候的に最も適していて、農民達が麺を干す様子が観察されます。現在では機械乾燥も可能になっているそうですが、それでも自然乾燥されるのが一番美味しいのだそうです。ちょうど、奈良の三輪素麺などで素麺が白い滝のようにぶら下げられますが、シーズンになるとそういう光景が広がります。私も、秋口にもう一度出掛けて見に行きたい物です。

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 せっかくここまでやってきたのだから、どこかのお宅にお邪魔して、麺をご馳走してもらうことにしました。ちょうど、農家楽(農家民宿)の前を通りかかったので、彼らが日常的に食べる麺を作ってもらいました。

 麺の生地はすでに冷蔵庫で熟成されていて、日本の手延べ素麺を作るのと同じように、索餅が保管されていました。それを引っ張り出してきて、伸ばして麺を作ります。この工程を「拉麺(ラーメン)」と中国語では呼びます。

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 出て来た麺は非常に具だくさん。野菜も鶏肉もいっぱいで、ご丁寧に卵も散らしてありました。まさに親子丼ならぬ、親子麺ですね。鳥の良いスープが出ていて、これが非常に美味しい。麺はうどん並の太麺です。歯ごたえもしっかりとあります。個人的には、豚骨スープよりも鳥スープのほうが味がまろやかで私は好きです。

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 数百年の歴史を誇る潘周家の麺は、乾燥させた麺も売られていて、こちらは家で湯がいていただきます。たっぷりのお湯を沸騰させ、麺をいれますが、このときに塩や水を加えたりしません。この麺の特徴は、しっかりとした歯ごたえですので、上海人の好きな柔らかな麺とは根本的に違います。もちろん、スープ麺としてでも良いですし、冷まして涼麺として食べても美味しいです。私は、日本のダシで食べましたが、素麺を食べるように頂けました。

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 さて、潘周家は、小さな村ですが、古い木造家屋も残されていて、ご先祖さんを祀っている祠堂が非常にたくさんあります。ざっと数えただけでも5〜6箇所はありました。一つの村にこれほど祠堂があるのは珍しい。そうした建物をブラブラ歩いてみるのもまた楽しいものです。

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 あ、野良犬が多いのでご注意くださいね。

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