2012年09月19日

最後は結局、自分で「見て聞いて確かめる」しかない

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  19日は例のゴタゴタ明けの初めての中医クリニックでの診察でした。日本人は全員キャンセルで、うちに来られるのは中国人の患者さんだけになるかな、とか勝手に想像していましたが、いつものように忙しい1日でした。皆様の健康をサポートする仕事をしているわけですから、中国人も日本人も私にとっては関係ありません。そこに患者さんがおられる限り私は診察し続け、上海在住17年の経験で少しでも皆さんに役立てることができたらと思っています。きっと、色々と不安に思っておられる方も多いことでしょう。 

 18日〜19日は日本人学校が休校だったこともあり、子連れの日本人を街でみかけることがはさすがに少なかったですが、上海にいる日本人の多くは注意しながらも、普通に生活をされているような印象です。とくに、中国に長く滞在している人ほど、そのノウハウを心得ているのがはっきりと分かります。今回の件で、日本・中国に関係なく、マスコミなどの報道に右往左往せず、情報を分析しながら、正しく自分で判断することがいかに大切かということを感じられた方が多かったように思います。このご時世、一人一人の価値観が多用化しているので、なにが「正しいか」と判断することは難しいですが、要は自分が、そして家族の一人一人が納得できる判断をすることが必要なのではないかと思います。

 そして、日本から見られている上海と、上海にいる我々からみている上海と、あまりにもギャップがあって少々戸惑っています。上海でも、浦西にいる人と、浦東にいる人とでは、また感覚が違うのではないでしょうか。結局、一番よく分かっているのは、そこにいる人たちであり、そこで自分の目で「見て、聞いて、確かめる」ことが非常に大切になります。(中医学に関しても同じなんです。)

 私は毎日、中国人のスタッフと一緒に、それも日本人が私一人しかいない環境で毎日仕事をしています。私の診察のアシスタントをしてくれているスタッフも当然中国人です。受付には日本語を喋るスタッフがいますが、職場の公用語は中国語だし、そんな中で、毎日スタッフといろいろな討論しています。まあ、中国におれば当たり前なのかもしれませんが、でもその中での日々の繋がりは大切です。こうした環境のなかで、毎日コツコツと日常をおくれることは、結構なことだと思っています。

 中国で商売をされている人は、今はもっと大変なことでしょう。今回の件は、前回と違って、持久戦になると私はみています。でも、どこにいてもリスクはあるわけで、なにも中国に限ったわけではありません。日本にいると地震のリスクもあるわけですし。領土問題にしても、多かれ少なかれどこの国も抱えています。逆に、中国に対して言えば、これほど目的とリスクがはっきりと分かりやすいのも珍しいのではないでしょうか。日本がまわりの国々とうまくつきあっていくことは、小さな島国である以上、仕方がないのです。日本は大国ではないのです。

 いまさらながらですが、上海で生活する限り、必要最低限身につけてもらいたいのは、やはり鉄壁な語学力だと思います。中国語がしゃべられなくても日本語で生活できた上海なんて、まだごく最近の話なのです。もし語学が分からなければ、いちいち他人の色眼鏡が入った情報を日本語で読む羽目になり、現地の人からの温かいアドバイスの声も耳に届きません。なにより、言葉ができなければその段階で、交わりを拒否しているように思われてしまっても仕方がなく、その場の雰囲気も読めなくなります。これはキケンです。その危機感を感じると、必死に言葉を勉強できるようになるのではないかと思います。外国語が苦手なんか言ってられません。

 その昔の上海では、○○県人会のような日本人が集まる会合をやるのも法的に問題があり、憚れたこともありました。外国人が住む場所も、古北などごく限られたエリアで公安の許可が下りませんでした。そういえば、公安もしょっちゅう我が家にやってきて家庭訪問がありましたね。そんな環境の中で、先輩の日本人達はコツコツビジネスをやってきたのです。そういった努力を水の泡にしないよう、前進していくしかないと思います。

 この逆風のなかでも日本人がここでビジネスを続けることができるか否かを、中国の一般の市民(消費者)がみています。「ああ、やっぱり撤退した」と「まだ頑張っている」とでは、将来へ向けての印象が全然異なりますから。

 しかし、日本の首相の「想定外」発言には、正直ビックリ。福島原発の事故以降、「想定外」でなんでも通じるようになっちゃったのかなあ。政府としての危機管理体制はどうなっているのだろうか。私はてっきり、中国がそう出てくるのを知って行動していたのと思っていました。。。。(甘い)



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posted by 藤田 康介 at 17:25| Comment(0) | 雑草と雑想

2012年09月17日

ポピュリズム

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 日本からみると、なんとも物騒なところにいるものだと思われるかもしれません。とはいえ、朝からちゃんとブログが書けていますので、いますぐにどうだこうだというわけでもないので、私はいつものように今日も用事を片付ける予定ですが、あえてそうしたゴタゴタを見に行こうというような気は全然ありません。
 2005年にも同じようなゴタゴタがあったわけですが、そのときはインターネット、とくにスマホがいまほど普及しておらず、デジカメで撮影した写真を、せっせとパソコンに転送して記事を書いていたのを思い出します。でも、いまは撮影された写真が、そのまま直接的にアップされるので、臨場感あふれる情報を知ることができます。これは、2005年とは全然ちがう環境です。

 そんな世の中ですから、以前と比較すると、人間は短期になり、長期的な戦略が立てにくくなっている、そんな感触があります。これは、なにもこのクニに限ったことではなく、日本でも同じだと思います。そして、台頭してくるのがポピュリズムではないかと。

 Wikiによると、ポピュリズムとは、「一般大衆の利益や権利、願望を代弁して、大衆の支持のもとに既存のエリートである体制側や知識人などと対決しようとする政治思想または政治姿勢のことである。」と書いています。さらに、その後ろを読んでいると「民主制は人民主権を前提とするが、間接民主制を含めた既存の制度や支配層が、十分に機能していない場合や、直面する危機に対応できない場合、腐敗や不正などで信用できないと大衆が考えた場合には、ポピュリズムへの直接支持が拡大しうる。その際にはポピュリストが大衆に直接訴える民会・出版・マスコミなどのメディアの存在が重要となる。」と解説されています。ああ、まさに今の両国の状態なんだと痛感しました。良いのか悪いのか、両国ではポピュリストもちゃんと登場しています。

 中国だったらWeibo、日本だったTwitterやFacebookなどSNSが台頭し、ポピュリズムに走る条件が揃っていて、一方は権力闘争の集団、もう一方は政治素人集団がそれらを利用し、あたかも正論の如く世論を動かす様子は、ポピュリズムそのものではないかと思います。

 さておき、私はとてもゴタゴタを直接見に行く根性や時間もないので、私に寄せられてきた様々な情報や写真を分析すると、今回のゴタゴタは完全に民意を反映したものではなく、クニのなかの異なった階層の人たちが、自分の都合のいいように動いている結果なのではないかと思います。そのために、軋轢が生じ、ゴタゴタとなっている感触です。

 その証拠に、大部分の地元の人たちの動きが、今ひとつ乗り気でないという点が挙げられます。そもそも、そうしたことがあったと知らない地元の人が大部分。もちろん、虹橋エリアにいれば、とうぜんその動きに敏感になるでしょうけど、その他の場所では、なんの動きもないといっても過言ではないのです。2005年のときも、実は妻は一切知りませんでした。今も、大部分の人たちは自分たちとは関係ないという姿勢を保っているでしょう。そういう層もいるんです。日本では考えられないかもしれませんが。

 でも、そうしたことは日本ではニュースにならないでしょう。記事のネタになりませんからね。いまの状態は、ライターさんにとってはお金稼ぎする絶好のチャンスなのかもしれません。昔、私もライターをしていた時期がありましたから、その気持ちがよく分かります。リツイートされる記事が増えると、フオローする人は増えますしね。どうぞ、命だけは大切にしてください。

 ポピュリズムが台頭してきたということは、個人が自分の判断で動く重要性が、ますます高まってきたということです。集団で動くことは、非常にキケンであることは、言うまでもありません。

 ということで、出張で日本と中国の往復は相変わらずありますが、このクニが、この街が、今後どのように変わっていくのか、見届けようと思っています。

 もともと、私はビジネスや金儲けをするためにこの街にきたわけではありません。ただ、中医学が好きで、それを勉強し、研究し、実践するためにきました。だから、たった一人しか日本人が、いや外国人がいない状態でも、大学生活を続けてきました。もちろん、嫌がらせもあったけど、そんなことはどうでもいいのです。
 私は、中国で中医学が消滅しないかぎり、一生これに関わり続けることになるでしょう。その結果、17年もこの地に留まることができました。中国政府からも奨学金をいただきました。

 興味深いことに、いまこの同時期に中国だけでなく、日本でもものすごい停滞感が漂っています。ただ、中国の場合、その層が厚いので、激しいことが起こることは十分考えられますし、今後も起こることでしょう。政治も両国共に落ち着いていません。
 でも中国は日本と違ってものすごく広い。この感覚は、普通の日本人ならまず分からないと思います。Googleの中国地図を見てみて下さい。いったい、この街にはどれほどの都市があるのか、そしてどれほどの人民がいるのか、規模の違いに驚きます。そのなかの50〜60箇所の都市、10万人や20万人程度のゴタゴタ、そりゃそれぐらいは起こるでしょう。

 リスクがなければ前進しません。私は、この変化をむしろ自分にとってプラスに捉えたいと思っています。ある意味、自分自身にチャンスと変化がくるのではないかと期待しています。(期待はずれになるかもしれませんが。。。。)



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posted by 藤田 康介 at 09:13| Comment(0) | 雑草と雑想

2012年09月15日

こういう時だからこそ

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(カラーで、しかもトップ扱いの特集です)

 上海に戻ってきて、日本へ出発する1週間前とぜんぜん違う雰囲気になってしまった上海の街。この気の流れの変化は、私も敏感に感じています。でも、街の大部分は極めて平穏です。上海に17年もいると、どこでなにが起こりそうなのかカンが働いてくるのです。それも、数年単位で定期的に発生しますから。

 先日も、出勤後に某日本料理屋で打ち合わせに行きましたが、やはり日本人が集まる場所だけに気が気でない。とくに、スーツをきて、いかにも日本からの出張者というようなスタイルで、しかもグループで街を歩くことは、極力さけたほうがいいと思います。私は一人の方が逆に安心です。

 今日あたりから、いよいよ本格的な動きがあることでしょう。

 これまでの各地の様子から、官製デモでも、パフォーマンス的にやらせるところまでやらせるでしょう。しかも、根本的に先をみこした行動というのができにくい国民性もあります。(感化されやすい)こういうのは、ここに長くいると自然と分かってくると思います。
 コースには虹橋路などもはいっているそうだから、付近の日本料理屋の中国人店主は気が気でないでしょうね。お気の毒にとしか言いようがありません。お互いでつぶし合いをするわけですから。

 今回は前回と違って、具体的な「もの」に関しての争奪戦の模様が色濃い。落としどころがまだ見えないので、目的を達成するまで、おそらく徹底的にことが進むのは間違いないと思います。

 とりあえず、今の私たちができること。それは、とにかく騒ぎに巻き込まれないこと。

1.日本系メーカーのクルマでは通勤はしない。私は徒歩通勤に切り替えました。
2.職場と自宅を往復し、寄り道しない。
3.日本人が多いエリア、飲食店には近づかない。
4.中国語ができない日本人成人とは極力タクシーに乗らない。
5.街中で携帯電話では日本語を喋らない。(特に地下鉄。逃げ場がないので。)
6.何かが発生したら、ヤジウマにならずとにかく逃げる。
7.田舎からきた中国人か、香港人・シンガポール人にカモフラージュ。(もめるので韓国人にはカモフラージュしません。)
8.単独行動か、中国人と行動する。

 さて、今回の件でここでどれだけの日本人や企業がが残ることができるか。ある種の篩い分けがなされるのではないかと思います。正直、ライバルが帰ってしまうとラッキーと思っているところもあるのでは。とくに2010年以降、あまりにも多くの日本人が上海に(中国に)来すぎました。

 一方で、異国の地で自分の身を守れるのは自分だけ。クニでも領事館でも到底ムリです。犠牲者が出ないよう、これだけはここにいるものの個人責任として最後まで忘れないようにしないといけません。このブログにも何回も書いていますが、中国は「自己責任」のクニなのです。

 余計なことを考えず、日本からの片道切符で世帯も構えている私にとっては、黙々と中医学での患者さんへの治療と研究に専念すると決めています。私にとって、患者さんには国籍はありませんし、自分がいまできること、それをしっかりとできたらそれでいいのです。中国人の患者さんも相変わらず来られます。
 
 残念ながら、日本では中医学はできないので、ここにいて中医学を発信し続けることが、中国政府から奨学金をもらって中医学を研究してきた私の使命だと思っています。

 今日もいつものように頑張って仕事にいきます。私が普通に活動することで、すこしでも皆さんの元気になれば。



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posted by 藤田 康介 at 17:25| Comment(2) | 雑草と雑想